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この世にひとり取り残されて

 

麻薬使用による最も恐ろしい副作用の一つは、一人で取り残されることだ、と言ってもよいだろう。

もちろん、静脈が膨れ上がって穴があくなんて、ぞっとする。皮膚がはがれて傷だらけになるのも、体に潰瘍ができて中から腐っていくことも、本当におそろしいことだ。だが、もっと恐ろしいのは、もうやめたい、麻薬から抜け出したいと思った時に、自分のまわりにだれもいないのに気づくことだ。自問してみる。「一人で麻薬をやめることができるだろうか」と。分かっている、「いや、そんな超人的なまねはできない、自分でよくなるなんて、治療を受けて、リハビリをして、社会復帰するなんて、とてもできることじゃない」と。そして、一人ぼっちの自分にはだれも助けてくれる人はいない。あんなに泣いて気づかってくれた両親にも背を向け、友人たちにも去られ、勉強も、仕事も捨てて、健康な子供を産むこともできない、そして、社会からも見放されてしまった。世間というのは、こんな人間には情け容赦ない仕打ちをするものではある。

「麻薬中毒やアルコール中毒のやつらなんてクズだ。社会の悪病だ。咳や鼻水をなおすように治療しなきゃ。根絶やしにする方法はどうでもいい、とにかく消してしまうにかぎる(悪性の腫瘍を手術するみたいに)」

「麻薬中毒のおじさんがいるけど、あんな奴ら、さっさとくたばってしまえばいい。身内の者全員を真っ先に売り飛ばしかねない、ろくでなしばかりなんだから」

「追いつめれば?で、生きたまま焼いてしまえばいい。人間じゃないし、動物以下の出来そこないだ(その通り)」

 世間からつまはじきにされること、それが全部、麻薬を使った罰だ。自分でも分かっている。しかし、世間の反応には耐え難い痛みを覚える。新しい腫瘍の痛みより、次々できるかさぶたよりも、ヤク漬けで脳が破裂するときの痛みよりも、何よりも激しい痛みだ。痛みを忘れるには残る手段はたった一つ、一回の量を増やすしかない。あそこまで行けるだけ、破滅に至るまで。あのとき手を出さなければよかったのに、なんて思いはとっくに忘れて。聞こえなかったのかもしれない、かけがえのないこの声が。

 「人間だから、だれでも一度は間違うことがある。人間として生きてください。心までねじ曲げてはいけません」

手を差し伸べて、深い穴からはい出させてくれたはずの、あの声が。

でも、もう遅い。破滅への最後の誘いを断れなかったのだから。自分が人間であること、今は違うが、かつては確かに人間だったことを忘れて。人として生きていられたかもしれないのに。いったいどうして、ようやくそれが分かるのが、世の中の余計者になってしまった自分に気付いた時なのだろう。

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